OECD自動的情報交換制度で、海外の口座情報は税務署に筒抜け!?

Takayuki Fujima
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2014年2月13日、経済協力開発機構(OECD)は、政府間で銀行口座情報を自動的に交換するための新たな国際基準の創設を模索するための共通報告様式(Common Reporting Standard: CRS)を公表しました。この自動的情報交換制度は、海外に口座を持つ方に大きな影響を及ぼすと言われています。具体的にどういう影響があるのでしょうか?事前に対策はできるのでしょうか?

自動的情報交換制度は、脱税・租税回避を防止するための国際的取り組み!

富裕層を中心に、海外の金融機関を利用して資産を保有したり、海外で投資をする人が増えてきています。もちろん、こうした海外での資産保有や海外投資自体は違法ではありません。しかし、資産を海外に隠して相続税・贈与税を免れる目的で、海外に財産を移す人も現実には少なくありません。

日本の場合、国外財産調書制度財産債務調書制度により、海外で資産保有をしている人に報告義務を課し、不提出・虚偽報告には罰則も課されるようになりました。

しかし、あくまで自己申告ですから、これらの制度だけでは十分ではありませんでした。

そもそも、国境を超える資金の移動を明らかにするには、個々の国がばらばらに努力するだけでは不十分です。

そこで、2013年にG20首脳が、各国の税務当局間で非居住者(例えば、香港の税務当局にとって、香港非居住者である日本居住者)の金融口座情報の自動的交換をすることに同意しました。そして、2014年7月、OECDにより、「租税条約に基づいた非居住者の金融口座情報を各国税務当局間で自動的に交換するための国際基準」が発表されました。

自動的情報交換制度により、海外の口座に関するあらゆる情報が日本の国税庁に提供される!

日本居住者が香港の金融機関に口座を持っている場合を念頭に置くと、主に以下の情報が、香港の税務当局から日本の国税庁に提供されることになります。

  1. 名前、住所
  2. 口座番号
  3. 金融機関の名称
  4. 口座残高(保険契約の場合、時価または解約返戻金の価格)
  5. 金融資産管理口座の場合、投資収益の情報(利息、配当等)、金融商品の償還や売却による収益の情報
  6. 預金口座に関する利息の情報

つまり、香港の銀行口座にある残高、香港の証券会社においてある商品の時価や配当など、あらゆる情報が日本の国税庁に提供されるとみておいた方がよいでしょう。

日本・香港間では2018年から実施予定!

この自動的情報交換制度は、実施年が国によって様々ですが、日本も香港も2018年に実施予定となっています。

ということは、現時点で、香港に資産を隠している日本居住者の方は、2017年末までに対策を立てておく必要があります。(ちなみに、現時点では自動的情報交換が無いだけであり、請求があれば情報交換はなされています。)

自動的情報交換制度の開始前に、どう事前対策する?

上に書きましたが、現時点でも、海外に5000万円以上の資産がある日本居住者は税務署に報告する義務があります。ですから、報告せずに資産を隠していたら、たとえ見つかっていない場合でも違法なのです。

ですから、今後の対応は、現時点で違法な人(海外に5000万円以上の資産がある日本居住者だが、税務署に報告していない)か否かで違ってくるでしょう。

OECD CRS

これまで、海外に財産を持ちつつ、法令を守ってきた人の場合

  1. これまでも海外の資産について国外財産調書を提出してきたし、今後も提出する。

⇒海外で資産運用している日本居住者の多くは、この分類に入るでしょう。

  1. これまで海外の資産について国外財産調書を提出してきたが、資産を日本に持ち帰る。

⇒自動的情報交換制度が開始されるからと言って、日本に資産を持ち帰る必要はありませんが、これを機に、海外に資産を置くのを止めるという人もいるでしょう。

  1. 自動的情報交換制度の適用が無い国に資産を移す。

⇒例えば、カンボジアは自動的情報交換制度に入っていません。ですから、2017年末までにカンボジアの銀行に資産を移せば、自動的情報交換の対象にはなりません。

  1. 自動的情報交換制度が適用されない立場になる。

⇒香港の口座に資産がある人の場合、日本居住から香港居住になれば、自動的情報交換制度の適用から外れます。

CRS countries

これまで、海外に財産を隠し持ってきた(違法だった)人の場合

  1. これまでは海外の資産について国外財産調書を提出していなかったが、今後は提出する。

⇒このカテゴリーにも、①過去の不提出について白状する組と②過去の不提出をしらばっくれる組があるでしょう。

  1. これまで海外に資産を隠し持っていたが、資産を日本に持ち帰る。

⇒海外から日本の銀行に送金する場合にはマイナンバーが要求されますし、現金で持ち帰る(ハンドキャリー)のも外為法上難しいです。過去の違法について白状するのであれば十分可能ですが、過去の違法がばれないように日本に持ち帰るのは簡単ではありません。

  1. 自動的情報交換制度の適用が無い国に資産を移す。

⇒例えば、カンボジアは自動的情報交換制度に入っていません。ですから、2017年末までにカンボジアの銀行に資産を移せば、自動的情報交換の対象にはなりません。ただ、国外財産調書を提出しないままであれば依然として違法状態です。

  1. 自動的情報交換制度が適用されない立場になる。

⇒香港の口座に資産がある人の場合、日本居住から香港居住になれば、自動的情報交換制度の適用から外れます。

いずれにしましても、これまで香港など海外に財産を隠し持ってきた人も、今後は財産を隠しにくくなる訳で、どう着地させていくかを探る必要があると思います。

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