香港の弁護士の報酬額は日本の1.5倍以上?高くて頼みにくい?

Takayuki Fujima
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香港のロースクールを卒業した後、法律事務所でトレーニーとして2年間修行するというのが、香港法弁護士の基本パターンです。

トレーニー期間を終えて弁護士として承認される式が10月22日に高等法院で行われたのですが、弊社と関係の深い法律事務所のトレーニーも新たに弁護士になるということで、私も招待され、行ってきました。

香港の弁護士承認式は、高等法院で、ウィッグをかぶった裁判官の前で行われる

香港の裁判所で、普通に目にすることの多いのは、HSBC本店の前にある趣深い建物でしょう。このHSBC本店の前にある建物は、2015年9月から使われている香港終審法院(Court of Final Appeal)です。

でも、弁護士として承認される式が行われるのは高等法院(High Court)、金鐘(Admiralty)の何の変哲もないビルの中です。(下の写真は、承認式の後、高等法院の玄関前で写真を撮ったりしている様子です。)

high-court

この承認式は、トレーニーを受け入れていた弁護士が裁判官の前で推薦文を読み上げ、トレーニーが宣誓書にサインする、という儀式でした。

高等法院の法廷には普段は法廷弁護士(Barrister)しか入れないのですが、この時ばかりは、招待者も入れました。(法廷内は写真撮影禁止なので、残念ながら写真はありません。)

香港の法律の制度は、一国二制度の関係で、英国統治時代の制度が維持されています。そのため、裁判官や法廷弁護士(Barrister)は、英国同様に、ウィッグをかぶっています。下の写真はだいたいのイメージ程度に思って欲しいのですが、おおよそこういう感じです。

ceremonial-opening-of-legal-year-2014

香港の弁護士は2種類、ソリシター(Solicitor)とバリスター(Barrister)

日本では、顧客から事実関係の話を聞くのも、裁判所で訴訟活動をするのも、一人の弁護士が全て一連の業務を行うことができます。しかし、英国や旧英国植民地の諸国では、前者の業務はソリシター(Solicitor、事務弁護士)、後者の業務はバリスター(Barrister、法廷弁護士)、と分業されています。

人口1億2000万人の日本で弁護士が36,415人(2015年3月末現在)ですが、人口約720万人の香港に、ソリシターの人数は5,303人(2010年末現在)、バリスターの人数は1,321人(2016年4月現在)。

人口比で見ると、ソリシターの数は日本の弁護士の2.5倍以上、結構多いですね。

court-of-final-appeal

↑HSBC本店前にある、香港終審法院(Court of Final Appeal)

香港の事務弁護士は人口比で日本の弁護士の2.5倍以上、競争原理で安くなるかと思いきや

人数が増え競争が激化すると質は上がり値段が下がる、というのが一般的原理です。

ソリシターの数が人口比で日本の2.5倍以上の香港、弁護士費用は日本よりずっと安いかというと、そうではありません。

日本の場合、弁護士報酬の決め方は様々です。契約書作成の場合は予め定めた金額を作成後に請求する定額方式だったり、訴訟の場合は着手金+成功報酬だったり、時間計算方式(1時間当たりの単価×所要時間)だったりします。

香港の場合、成功報酬方式が禁じられていることもあり、時間計算(1時間当たりの単価×所要時間)を基本とすることが多いです。そこで、日本の弁護士と香港の弁護士の1時間当たり単価を、ざっくりと比較してみましょう。

日本の弁護士の場合、弁護士の1時間当たり単価は、弁護士の年次やランクによるのですが、約25,000円~50,000円でしょう。

一方香港の場合、高額なことの多い英米系の事務所だと、約3,500香港ドル(約45,000円)~7,000香港ドル(約91,000円)です。比較的安価な、中小規模の香港ローカルの法律事務所でも、約3,000香港ドル(約39,000円)~約5000香港ドル(約65,000円)です。

さらに、①所要時間をきっちり請求する、②訴訟のときはソリシター・バリスター費用の両方必要という厳しさ

時間計算方式の場合、1時間当たりの単価×所要時間と書きました。香港では、1時間当たりの単価が高いのですが、信じがたいことに所要時間も長い傾向があります。

これは、統計の取りようがないので、経験上の感覚ですが、日本の弁護士は、実際に使った時間よりも短めに請求する傾向があります。例えば、契約書作成に5時間かかった場合でも、「所要5時間」として請求せず、「所要2時間」として請求しているように感じられます。これは、「この契約書を作成するのに5時間かかったと書いたら、頭が悪いと思われるかもしれない、2時間で作成できたことにしておいた方がカッコいいかな。」という、弁護士の自意識過剰な発想に由来するような気がします。

それに対し、香港の弁護士は、実際に要した時間をきっちり請求する傾向にあるようです。

さらに、先ほど書いたとおり、訴訟をする場合には、ソリシター・バリスターの両方を雇わなくてはなりませんから、訴訟をする場合の費用は日本で訴訟をする場合の何倍にもなります。

ここまで読んで、「香港法弁護士は使いにくい!」と思うのは早計かもしれない

このように書いてくると、「香港法弁護士は使いにくい、香港でビジネスをするのは面倒くさいから、香港に進出しない!」と考える人もいるかも知れません。

でも、それは早計に過ぎると思います。

率直に言って、日本は、弁護士・会計士・税理士などのプロフェッショナルが無償でアドバイスをすることが多く(=アドバイスをしても報酬を徴収できないことが多く)、そのため、日本人・日本企業は、(言葉は悪いですが)甘やかされている部分があるように思います。

香港法弁護士は、決して過酷な訳ではなく、先進国の標準的なサービスを提供していると思いますが、日本流のサービスに慣れた身にとっては、「香港法弁護士は使いにくい。」と感じてしまうのも分かります。

もちろん、日本に住んできた日本人・日本だけでビジネスをしてきた日本企業が、いきなり香港法弁護士を使いこなすのは難しい場合もあると思います。

OWL香港は、香港法弁護士と共同で、契約書準備、ライセンス取得などをサポートした経験を色々持っています。香港で法務上の問題をどう解決すべきかお困りの方、御相談ください。

問い合わせ先(OWL Hong Kong Limited):info@owlhongkong.com

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